一般財団法人 日本自動車査定協会 東京都支所
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査定士の実務
7. 査定車の試走
01 査定の考え方
02 車両全体の印象
03 運転席及び室内
04 エンジンルーム内
05 ボディ外板
06 ガラス・灯火及びタイヤ
07 査定車の試走
08 修復歴の考え方
09 前部の修復歴
10 側面の修復歴
11 後部の修復歴
12 不正及び災害車両
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機能を総合的に確認するためには、試走を行うのが基本です。しかし、査定場所の状況によっては、試走できない場合もあります。

エンジンを始動し、少しくらいの前進、後進ならできるはずです。不具合現象の重大発見に結びつくこともありますので、許される範囲内で試走を実施するようにしてください。


7-1 ミッションの具合

ミッションには、自動変速のオートマチックトランスミッション(A/T)と、手動変速のマニュアルトランスミッション(M/T)があります。

「A/T」は、アイドリング状態で各変速段位(各レンジ)にセレクトし、各ギヤがスムーズに入れ替えられるか点検し、それと同時にタイムラグテストを行ないます。

「M/T」は、クラッチペダルを踏み込み各変速段位にスムーズに入れ替えられるか点検します。もし、アイドリング時に異音が発生しているときは、クラッチを切ってその異音が止まればミッションの本体に何らかの原因があると考えられます。


オートマチックトランスミッション

タイムラグとは時間遅れのことで、NレンジからDレンジまたはRレンジにセレクトしてから、変速ショックが何秒後にあるか測ることで、ミッションの作動状態の点検ができます。タイムラグが2秒以上あるものは修理工場等で点検が必要です。


7-2 クラッチの具合

クラッチの主な不具合には、すべりと切れ不良があり、クラッチのすべりとは、クラッチをつないだ状態で、エンジンの回転を上げても車がそれに比例して加速しなかったり、坂を上がれないなどの現象です。

また、クラッチの切れ不良とは、発進のときギヤを入れるとガリガリいって入りにくく、むりに入れると自然に車が動きだすなどの現象です。


左にあるのがM/T車のクラッチペダル

クラッチの点検は、アイドリング状態で駐車ブレーキを効かせたのち、クラッチを踏み込んで、2速または3速にギヤを入れ、エンジンの回転を少し上げ、クラッチをつないでみてエンジンの回転が止まれば正常で、止まらないときはクラッチディスクのすべり(摩耗)と判断できます。


7-3 加減速の具合

アクセルペダルを踏み込んだと同時になめらかに加速するか、離したとき減速するか、ブレーキをかけたときキーキー音はないかなどで、エンジン、ミッション、ブレーキ等機能の総合的な点検が行えます。

また、試走ができない場合でも、ニュートラルのアイドリング状態で、アクセルペダルを踏み込み、エンジンがスムーズに回転するかくらいは点検してください。

【 参考】
推定原因 現象 処置
エンジンのミスファイヤ エンジンの出力が低下し、加速状態が悪くなる エンジン調整
圧縮圧力の不均等 エンジンの出力が低下し、アイドリング時にスムーズな回転をしない エンジンO/H
ライニング、パットの摩耗 ブレーキをかけたとき、キーキー音が発生する 摩耗部品交換


7-4 異音の有無

ウィンドガラスを開け、エンジン、ミッション等機能に不規則な音が入っていないか、異音がでていないかなど機能関係の音が聞こえるようにします。

また、エンジン、ミッション等機能の正常な音は、規則正しく耳ざわりになるようなことはありません。もし、何か変な音が出ていると感じられるときは、何らかの不具合が発生していると考えられます。

【 参考 】
推定原因 現象 処置
タペット音 もっともわかりやすい音で、バルブクリアランスが大きいすぎるとき、カチカチ音が発生する バルブクリアランスの
調整
ゼネレータの異音 ベアリングが不良なとき、シーシー音が発生する ベアリング交換
ピストン打音 シリンダとピストンのすき間が大きすぎると、コンコンとサイドノック音を発生する ピストン、リング交換
またはボーリング
*エンジンについては暖機状態後、再度確認してください。


7-5 振動の有無

エンジンを始動し、ハンドルを両手で軽く握り、手のひらに伝わってくるエンジン等の微動を感じとることで、バランスの悪い振動を発見することができます。

振動を発見したとき、どこから発生しているのか、その原因を探すことは容易なことではありませんが、ほっておくとだんだん騒音を伴い振動が大きくなり、故障や事故につながることもあります。

【 参考 】
推定原因 現象 処置
ミスファイヤによる振動 運転中のバランスが悪く振動する。エンジンの出力が低下し、加速状態が悪いなる エンジン調整
点火時期の狂い エンジンが始動しにくかったり、バックファイヤを起こしたりする 修正
ロードホイールの変形 走行時にハンドルが振れる ホイールの交換


Advice

査定時に、走行テストはなかなか出来ることではありません。しかし、機能の不具合現象を発見することは、その車の故障や事故防止につながる場合がありますので、できるだけ実施するよう心掛けてください。

また、それら不具合を発見したときは、ユーザーにきちんとそのことを伝えることも「信頼される査定士」として、とても大切な仕事になります。


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